廃棄野菜を使ったウニの養殖が各地で進んでいるとの報道がありました。
水産庁によると全国の藻場は減少傾向にある。温暖化による海水温上昇で藻を食べるウニや魚類の生息域が拡大したことが要因の一つとされ、小魚のすみかが奪われて漁業にも影響を与えている。栗田助教授は「磯焼けした海のウニは痩せて売り物にもならない。増えすぎたウニを捕獲し、捨てられる食品を与えて商品にできれば理想的だ」と話す。
北海道新聞より引用
ウニが海の厄介者になって駆除されていること、その捕獲されたウニに海藻の代わりにキャベツを与えて養殖していることは、数年前から話題になっています。
磯焼け(いそやけ)とは海に生える海藻類が海水温の上昇や外来魚やウニ類(ムラサキウニやガンガゼ)などの食害などによって消失してしまう現象。
磯焼けが発生した海域では、温暖化の影響でムラサキウニが大繁殖し、磯焼けが深刻化しているそうです。
地球温暖化が問題となっていますが、今後ますます温暖化が進み生態系に影響が出てくるのは避けられないですね。
壮大なテーマとなり私には手に負えないので、私はキャベツウニの話題から探ってみたいと思います。
先駆けとして神奈川県水産技術センターが、出荷できない野菜を利用してウニの養殖の研究を2015年から始めています。
キャベツウニとは?
磯焼け対策で駆除された「スカスカのムラサキウニの有効利用として、何でも食べる雑食性であることを活かして、海藻以外をえさとして食べさせることで、身入りさせようと考えたのがきっかけです。」と話す神奈川県水産技術センターの臼井一茂さん。
ムラサキウニに三浦半島特産のキャベツ(規格外のものやキャベツの外側の葉など廃棄するもの)を与えて身入りをよくしたものがキャベツウニです。
甘味成分のグリシンが多い一方で苦み成分のバリンが少なく、天然のムラサキウニと比べて磯臭さが少ないのが特徴のようです。
ウニは海藻だけでは食べ飽きるのか、食べない時もあるのだそうです。でも、キャベツならずっと食べ続けているそうです。
飼育当初は80匹が1週間でキャベツ1つを食べていましたが、温かくなると次第に食べる量が増えて、1週間で2~3個は食べてしまいます。
臼井一茂さんのインタビューより引用
現在はまだ、量産技術が確立されていないそうで限定的な生産のようですが、量産化に向けた取組を進めているようなので、キャベツウニがスーパーや飲食店で見られるのも遠くはなさそうですね。
なぜウニにキャベツをと考えたのか
【苦みや臭みなし】廃棄キャベツを与え、身入りを良くした「キャベツウニ」を商標登録 神奈川https://t.co/oPabcODARj
磯の海藻を食い荒らす厄介者のムラサキウニ。ブランド化して出荷できれば、磯焼け対策と流通規格外のキャベツの有効利用の一石二鳥となる。 pic.twitter.com/gkOpxtRX6v
— ライブドアニュース (@livedoornews) January 4, 2021
このキャベツを食べるウニの映像は、ニュースになるたび反響が大きく、「かわいい!」と話題になりますね。
キャベツを取り合ったりもするそうですよ。
- 2019年7月9日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の神奈川県水産技術センター 臼井一茂さんのお話の中で、
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「実は海の中は今ひどい状況なんです。「磯焼け」と言って海藻が本当にない。まるで砂漠みたいな状態。これは温暖化とか、南方系の魚が食べちゃうとか色々あるんですが、原因の生物のひとつがウニだったんです。特に三浦半島ではムラサキウニがたくさんいて海藻を食べ尽くしてしまう。駆除されているんですが、ムラサキウニはなんでも食べる雑食性だというので、生産の特定地になっていて必ず生産しなきゃいけないキャベツの流通規格外を分けてもらって、うまくそれを使おうというのが今回の考え方なんです。両方ともやっかいもの、これを組み合わせたら商品になったという一石二鳥三鳥の話がこの取り組みなんです。」
ようするに、やっかいもの2つを利用して誕生したのが「キャベツウニ」なんです。
店頭やお店で目にするウニは主に北海道産の「キタムラサキウニ」で、体積の15%位の身入りなのに、三浦海岸の「ムラサキウニ」は0〜2%ほどしか身がなく駆除となっていたそうです。
磯焼けで、海藻が減ったためウニは痩せて、売り物にならず駆除される運命に。本当にスカスカです。
ウニも大変なんですね。
ムラサキウニの産卵期は7月位で、その前の2~3カ月間が給餌期間となるようです。
ちょうどその時期に三浦半島でたくさん生産されていたのが、特産品のキャベツで、流通規格外のキャベツに白羽の矢が当たったのですね。
たまたま、「この時期に採れていたのがキャベツで、もう少し早ければダイコンだったかも」というエピソードもあるようです。
ウニは雑食性ということで、駆除用に捕獲したウニに廃棄するキャベツを与えところ、平均12・5%、最大では18・6%にウニが育ち、十分食用として活用できる身入りとなったようです。
さらにウニの食べられる部分を科学的に分析したところ、その成分(各種アミノ酸などの含有量)は市販されているウニとほぼ同じだったのだそうです。
キャベツの他に大根やスイカ、ブロッコリー、ニンジン、ジャガイモなど20種類以上の野菜を与えてみたそうです。
マグロやホッケなどもエサとして与えてみたようです。たんぱく質を食べると身入りは良くなるが味に苦味が出るのだそうです。
最終的には100種類位のものを試したそうで、香りの強いものやイモ類はあまり食べなかったそうです。
そんな中、三浦半島の特産のキャベツを一番活発に食べ、身入りのいいウニができたようです。
神奈川県キャベツウニの味は甘い?ほかの野菜は?
試食会の様子も話されていましたが、キャベツウニはなかなか好評で味は甘いようですね。料理でも、甘味の隠し味に野菜が使われますから、そういうことなのでしょうか?
キャベツウニの味は?甘い?
おいしい!普通のウニより水分が多いかも
ニガミもなくてさっぱりという感じ、薬品も使っていないし香りも最高です。
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キャベツが入っていると感じない。クセがなくてたべやすい。
まったく臭みがなくさっぱりしていてすごく甘かったです。
食べた感想は、なかなか良いようですね。さっぱりしていて、クセがなく、甘いんですね!
磯の香りはどうなのでしょうか。北海道人としては全くないのも寂しいような気がしますが、変な臭みがないのは食べやすそうですね。
私が頂いた最高のウニは、根室の漁師さんが捕った新鮮な超新鮮なウニでしたが、クセがなくホントに甘いんです。とろける甘さで感動しました。
逆に、臭みや苦みが強くて失敗したと思うものにもたくさん出会っています。甘味けっこう重要です。
クセのない甘味のウニがあれば、間違いなく買ってしまうと思います。
キャベツウニから甘み成分の「グリシン」が多く検出されたらしいのですが、与えたキャベツにはほとんどグリシンは入っていないとのこと。
『キャベツを食べたことでウニの体内で成分が変わったのでは』と言っていました。
ダイコンやスイカは適さなかったけどキャベツはウニと相性が良かったというのはすごい発見ですね。
キャベツの次はどんな野菜?
ムラサキウニの取り組みを行なっているのは、神奈川県だけではなく、山口県では下関市ゆかりの野菜、トマトとネギと大葉春菊をあげた結果、トマトが一番味がよかったそうです。サイズを均等に育てるための人工飼料など工夫しているそうです。
九州では、九州大の教授がキタムラサキウニにタケノコを与えて40日間飼育したところ「磯の香りは少し弱いが甘くコクのある味わい」と。
他にも「クローバー」を食べさせる研究が進行中。四つ葉のクローバーを与えて「幸せを運ぶウニ」を作ろうとしているそうです。
長崎県では、出荷時に捨てる特産のアスパラガスの切れ端を与えてみましたが、身入りはいまひとつで、地元産の焼酎かすを与えるなど改良中とか。
九州大大学院農学研究院の栗田助教授は
「ウニの養殖が広がれば藻場の再生や生態系の保護にもつながる。ご当地の特産品を食べた『名物ウニ』が各地で生まれたらうれしい」
と話していたそうです。
キャベツウニの販売はある?
今はまだ各地とも試験的な試みで、商品化はまだまだ先かもしれませんが、すでに販売しているところがあります。
逗子市の小坪漁業の関連会社がこのキャベツを与えて養殖したキャベツムラサキウニを地元のスーパースズキヤに出荷。
店頭で殻付き1個300円で販売されると行列ができ、あっという間に完売となったようです。
この会社の社長さんは、「来年には生産量を3倍にし、新たな名物として、飲食店にも流通させたい」と語ったそうです。
この時は、地元のイタリアンレストラン『トラットリア・ラ・ヴェルデ』さんでも数量限定で提供されたそうです。
キャベツウニまとめ
もともとは深刻な磯焼けから始まった取り組みですね。
磯焼けの原因はもっと深いところなので、根本的な解決にはなりませんが、今ややっかいもののウニに廃棄野菜のキャベツなどを活かす取り組みは、最高のアイデアではないでしょうか。今後各地で取り組むことになっていきそうですよね。
キャベツを食べているウニの姿がとっても可愛く思えてしまいました。
あなたの街の「ご当地ウニ」出てくると楽しいですね。
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